[ 文:橋本真由美 写真:橋本道継 ]



 夏の祇園祭、秋の時代祭と並ぶ京都三大祭のひとつである葵祭。710年の平安遷都の100年以上前に始まった上賀茂神社と下鴨神社の5月15日の例祭で、その昔は「賀茂祭」と呼ばれ、日本の王朝風俗の色を残す数少ない祭といわれています。


 歴史の古さゆえに時代の流れにも翻弄され、応仁の乱、明治時代の東京遷都、第二次大戦と何度も中断復活を繰り返しながらも、葵の葉に彩られた華麗で静かな平安絵巻さながらの約1kmの行列「路頭(ろとう)の儀」を現在も見ることができます。

 有料観覧席もありますが、京都御所〜下鴨神社〜上賀茂神社へ向かうコースは事前に決まっているので、道中のどこででも無料で見ることができます。とはいえやはり下調べをして、新緑のきれいな場所で見たいものです(暑さ対策、忘れずに)。


 祭りといってもお神輿ワッショイの雰囲気とは違い、祭り気分を盛り上げる露店もいっさい出ることはありません。天皇の勅使が各神社を奉幣するという行列は、とにかく静か。見ている人も静かで、パッカパッカという馬のヒヅメの音と、牛車のきしむ音だけが周囲に響き渡っています。



 テレビニュースでは毎年行列の様子が報じられるので、その風景をご存知の方は多いかと思いますが、ぜひ実際に見て頂きたいですね。アスファルトの公道を馬がパカパカと歩き、絵や模型でしか見ることがないと思われる大きな牛車がギシギシと重そうに動き、双葉葵の葉で飾った雛人形の段飾りと同じような装束を着た人達が、しずしずと歩く光景は優雅でいてどこか別世界。

 今はもちろん一般の人達が装束を着て歩いているのだと分かっていても、住む世界の違う人達の祭礼であったことを実感する、綺麗で豪華で不思議な時間が過ぎていきます。


 もちろん現在、ヒロイン的存在の斎王代の女性を含め、装束を着て歩いている人達は一般の方々。カメラを向けた見物客から「こっち向いて〜」と声がかかると、(時には斎王代も)はにかんだ笑顔でこちらを向いてくれます。


 行列が上賀茂神社に到着して一連の儀式を終えた後、夕刻には馬が直線を全力疾走する姿を奉納する「走馬の儀」が行われます。これがなかなかの迫力で、馬や乗尻(のりじり)と呼ばれる騎手の装束の豪華さも加わり、目の前を駆け抜ける馬の姿に心揺さぶられるものがあります。馬のご機嫌しだいでは開始時間まで待たされることもあるようですが、見る価値十分。できれば気長に待って最後まで見届けて頂きたいですね。



 なんだか世界が違う平安絵巻、葵祭。テレビで見るのと実際に見るのとでは空気感がまったく違います。ぜひ5月15日の京都を訪れて、この不思議な時間を堪能してください。




終わり


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