十九年夏五月五日、藥獵於菟田野。取鶏鳴時、集于藤原池上、以會明乃往之。… 【日本書紀 推古天皇19年(611年)5月5日より原文】

いきなりの小難しい漢文だが、これは鹿と人の繋がり、これから語る「鹿革のふるさと」菟田野との密接な関わりを表す、もっとも古い文献である。

上記の文に出てくる「藥獵」は薬草摘みや鹿狩りのことで、「くすりがり」と呼ばれる古い宮中行事。鹿の角が薬として珍重されていたことから、万葉の昔から菟田野の地で鹿狩りが盛んに行われていたことを今に伝えている。


奈良県の北東部、静かな農村が広がる宇陀市菟田野(うたの)。鹿革産業は菟田野の古くからの地場産業である。

鹿革の原皮はこの地にしか仕入れられておらず、鹿革の出荷高は全国シェアの95%以上。国内で鞣される鹿革の殆どが、ここ菟田野で鞣された鹿革であると言って良い。







株式会社藤岡勇吉本店が本格的に鹿革だけの鞣し業を始めたのは明治初期。以後130年以上にわたり菟田野の鹿革の品質を守り続けている。

革の品質は、原皮の産地以上に「鞣される地域」が大きく関わっている。山に囲まれた菟田野の凛とした空気と、山から流れる清らかな水に育まれ、鹿の皮は熟練の鞣し職人の手と技によって、「FUJIOKA DEER」へと生まれ変わる。

鹿革の魅力は、なんといっても人肌に近い柔らかな手触りと、耐久性を併せ持つしなやかさ。その魅力を余すことなく活かしきるFUJIOKA DEERの品質は、ペアスロープの鹿革製品の全てに見ることができる。
一度でも手にとっていただくと、“人肌に近い”という言葉の意味を、じかに感じ取っていただけるだろう。






漆は堅牢で防腐、防虫、防水性、また装飾性にも優れていることから奈良時代以前から、革製品に漆を塗る「漆皮」という加工技術があったといわれている。特に鹿革の漆皮は、鹿革の耐久性、柔軟性と漆の強さや美しさを組み合わせることで、1300年以上前から武具や日用品、工芸品が作られた。

そのひとつが、印伝と呼ばれる漆皮工芸品。


江戸時代初期にインドから持ち込まれた鹿革工芸品を国産化。「印度伝来」という意味が印伝の語源となったと伝えられている。

特殊な方法で鞣した鹿の染め革に、美しい模様を切り抜いた型紙を当て均等に漆を刷り込み、室(むろ)でじっくりと乾かして作られる。

印伝の繊細な装飾模様は、とんぼ柄や小桜柄に代表される伝統的な古典柄から、遊び心で作られた創作柄、エキゾチックな幾何学模様までさまざま。ぷっくりとした手触りと漆の光沢と相まって、見る人の目を一瞬で惹きつける。




相手は一頭ごとに性質が違う生き物の皮。少しの技術のズレが染色に響いてしまうため、鹿革職人の研ぎ澄まされた鞣し技術こそが、印伝の美しさを左右すると言っても過言ではないだろう。

はるか昔から、人々の生活に寄り添い続ける鹿革の革小物。

皆さまにご紹介できるのはほんの一部分に過ぎないが、FUJIOKA DEERが創り出す、人肌の温かみと優しい手触り、そして鹿革の魅力をさらに高める漆皮・印伝が織りなす世界を、手に取ることで知っていただければと願っている。




FUJIOKA DEER 「印伝」
品質:鹿革漆皮
MADE IN JAPAN

各製品とも少量生産のため、印伝の色や柄は順次変わります。
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